2015年8月24日月曜日

【トルファン】「くぼんだ地」

□ウイグル族



トルファンは中国・新疆ウイグル自治区の町で、古くからシルクロードのオアシスとして人が居住していた場所である。

敦煌からついにあこがれのウイグル自治区にやってきて、人々の顔立ちが漢民族ではなくなった。もちろん漢民族もいるが、多くがイスラム教徒のウイグル族である。
かれらはトルコ系の民族らしく、彫りの深い顔の彼らを見ている限りではここが中国とは信じがたい。



特に女の人は民族衣装を着ていて、美人が多い。

料理もケバブ(羊肉や牛肉の串焼き)などが増えた。ウイグル料理はおいしい。

食べかけのウイグル料理


果物が安くておいしい。ぶどうやハミ瓜(細長いメロン)が有名。ハミ瓜はひと玉60円くらいだったので毎日のように食べていた。桃もうまい。干しぶどう名産品。
中国人は本当に毎日果物を食べているが日本人はそんなに毎日食べないな。
とにかく偏った栄養を果物で補う日々だった。


路上の「ハミ瓜売り」。日本のメロンとは違ってシャリシャリしている。



□トルファン盆地


トルファンは「トルファン盆地」という大きな盆地の中にあり、海抜がものすごく低い。
北に天山山脈(最高峰は7,439m)がそびえ、そこから雪解け水がこの「くぼみ」にドンドン流れこんでくるので、水はかなり豊か。
果物がたくさん育つのもこの雪解け水のおかげである。


矢印で示したところがトルファンの町。


気候は砂漠気候で、夏はとても暑く(平均気温40度くらい)、冬の寒さも厳しい。年間降水量は20mm。東京の年間降水量が1529mm。ちなみに伊豆大島の2013年台風26号による24時間降水量が824mmなので、トルファンの41年分の雨が伊豆大島に一日で降ったことになる。自然は偏っている。


なので、僕の訪問した7月もとにかく暑く、乾燥していた。
日差しが痛い。でも木陰は涼しかった。


灼熱のなか自転車を借りて走り回った。30分に一度くらい飲み物を買わないとやっていけなかったし、水で濡らした手ぬぐいは15分で乾いてしまう。


日陰のない道はつらい。日中は40度以上あったと思う。


交河故城という古代遺跡もカラカラの泥のかたまり。


ここらへんからiPhoneアプリでGPSログをとるようになった。
あとから眺めるとその日の出来事が思い出されて良い。写真にジオタグもつけられる。


2015/06/29のログ。歩いてモスクに行ったり途中で家を訪問したり。


2015/06/30のログ。博物館に行った後自転車で交河故城に向かい、帰りにぶどう干し小屋群を調査。


2015/07/01のログ。古代水路のカレーズ博物館、ムスリムの墓、ウイグル族の家訪問など。


航空写真の緑のところはほとんどぶどう畑のようだった。


□地下水路・カレーズ(karez)



トルファンの居住環境を考える上で重要なのが「カレーズ」という地下水路である。
イランでは「カナート」、北アフリカでは「フォガラ」と呼ばれる。カナートはメソポタミア文明を支えた大きな生命線であった。

wikipediaの「カナート」の項にこの地下水路の伝播図が載っていたので参考までに。



なんとアメリカまで伝わっているらしい



カレーズ博物館で見たシステム図を書き写したのがこれ。

地上から地下の水を含む層に垂直に穴を堀り、それらを地下でつなげて水路としている。


天山山脈の雪解け水を地上に導く工夫。はじめから地上に水路があると、すぐに乾燥してしまう。

博物館には大きい地形の模型もあった。

天山山脈から丘陵地を経て、ブドウ干し小屋、住居、そしてその下にため池と農地がひろがっている。


丘陵地の穴の部分を地上からみるとこうなっているらしい。

手前が山地、奥へ向かって水が下っていっている


まるでモグラのような人間の営為である。古代の中国三大事業であると書いてあった。




カレーズ博物館の情報によると、
ここトルファンでも古代の国家事業としてカレーズが作られたらしい。そしてそれは現在でも現役で使われている水路なのである。
トルファンに残っているのは404本、かつては新疆全体で1784本ものカレーズが作られたのだそうだ。

現在は使っていないカレーズも多いが、いくつか現役で残っているものも見た。

カレーズを水浴びに使っている


かなり透明度の高い水が流れている

家の敷地内を流れる(住居の下?)秘密のカレーズ



秘密のカレーズを教えてくれたウイグルの少年たち。


秘密のカレーズに連れて行ってくれた少年たちは、おもむろにカレーズの水を飲み、「お前もやってみろ」みたいなことを言っていたので飲んでみた。おいしい水であった。
彼らの生活を知るにはここでビビっていられないのである。


カレーズは道路の両端に流れていることが多く、その水路脇にポプラの木が植えられ、木陰をつくると共に防風林として機能している(トルファンは風が強い。地形と気候がそうさせるのだろうか)


木陰でよく人が休んでいるのを見た


そしてカレーズはブドウ畑へと注がれる。


規則的にならぶブドウ畑。昼夜の寒暖差が甘さを出すらしい。



□トルファンの環境まとめ



トルファンの環境を断面ダイアグラムでしめす。
(ぶどう干し小屋については後述。)


トルファン断面ダイアグラム。比較的わかりやすいシステム。



この「くぼんだ地」で生きのびるために重要なのは「水を得ること」「日差しを遮ること」そして「風を遮ること」であろうか。


さてこの環境でウイグル人たちはどんな家をつくったか。次回に続きます。


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