2015年8月28日金曜日

【トルファン】ぶどう干し小屋から考える

ウイグル族の家について書く前に、トルファンに点在するぶどう干し小屋を紹介しよう。


□ぶどう干し小屋発見



干しぶどうはトルファンの名産品であり、カレーズの水と太陽によって育ったぶどうは収穫後、ものによるが9ヶ月ぐらい乾燥されたりする。
そのぶどうを干すための小屋、季節的にまだぶどうは中になかったのだが(ちょうど収穫の直前の時期に訪問しました)、まことに壮観であった。
トルファンに行く前はこの存在を知らなかったので、発見したときは感動した。


交河故城から見るぶどう干し小屋


市内からチャリを漕ぎ続け到着した古代都市遺跡から、何か丘の方に小屋群を発見。

近づいてみると...


ぶどう畑越しに見る


ぶどう畑の向こう側に、同じ建物がたくさん建っている。
そして、その部分はもはやポプラなどの木が一切生えていない、"集落の外側"のようである。


ぶどう干し小屋群へ続く道


ぶどう畑をこえると家々が少しあり、その奥に丘へ続く道があったので、チャリを投げ捨てて近づいてゆく。


丘に到着。砂漠である。


丘に到着すると、同じデザインのぶどう干し小屋が整然と並んでいた。
スケールを変えたら、近代的なマンション群にも見える。



□とりあえず実測してみる



とくに誰もいなかったので、ドアが開いていたこちらの小屋を実測することに。
汗を垂れ流しながら、「こんなに暑いところで僕は何をやっているんだろう」と思いながら。


実測したぶどう干し小屋


実測平面、一部立面


「ウイグル族のぶどう干し小屋」
築年数:不明
規模:平屋
構造:日干し煉瓦積み
屋根:ポプラの木、枝、藁+泥


約9m×5mの小屋。
日干し煉瓦はトルファン一帯に無尽蔵にある泥からつくっているのであろう。地面と建物の色が同じことがそれを物語っている。

この日干し煉瓦で柱をつくり、その間の壁は交互に積んで穴だらけにしている。これは、ぶどう乾燥に必要な風を通すためである。集落から離れた丘に立地しているのは、風が必要なためであると思われる(ポプラの防風林もここにはない)。
そして風は山から吹くので、山から低地の村の方へ、南北に長辺が面している。
前面には柱の幅は同じで前に出した末広がりの支えがつくられている。

小屋の中を覗くと、強い日射ではっきりと影ができていて非常に美しい。


まだ、中にはなにもなかった


天井の見上げ


屋根はポプラの木の梁に枝、さらに藁のようなものを敷き詰めて泥を塗る。
雨がほとんど降らないので、防水などは考えなくてよいし、傾斜をつける必要もない。影だけつくれればよい。日本とはえらい違いだ。この屋根はウイグル民家でも大体同じであった。




ポプラの梁は外に突き出ていてユニークである。
そして最上部の開口は模様になっており、イスラムの装飾を感じる。


以上の[泥と日干し煉瓦]・[ポプラの梁]・[風を通す]・[影をつくる]、といったエッセンスは、実はウイグル民家のエッセンスをもっとも簡潔に示しているものなのである。

ウイグル民家も、ほとんどこのぶどう干し小屋と原理が変わらない。



□建物付属のぶどう干し小屋



実は集落の外だけではなく、集落の中にも、住居に付随してぶどう干し小屋をつくっているところもある。



住居付随型のぶどう干し小屋


こちらも住居付随型。ぶどう畑越しに。


住居付随型のぶどう干し小屋は、2階(住居の上)に設置されている。
これは面白くて、集落外に比べ風通しの悪い集落内では、少しでも風を通すために住居の上に設置されるのではないか。
離れたところにぶどう小屋を持っていた人が、めんどくさいから家の中に乾燥小屋をつくろう、と考えたときに「エイ」と2階にのっけてしまった感じ。それがウイグル集落の面白い景観の一部となっている。


集落外と集落内、立地によるぶどう干し小屋の違い



以上、ぶどう干し小屋の観察によってウイグル住居のエッセンスの事前学習と、立地によるぶどう干し小屋の違いについてでした。

さすがに次回から家が登場するはずです。


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